b型肝炎ウイルスの保菌者の疑いがあるなら

b型肝炎ウイルスの保菌者であるかどうかは、健康診断や人間ドッグなどでおこなう血液検査、自治体などがおこなっているウイルス検査でわかります。ここでは検査結果を見るときに役立つ情報や、陰性や陽性を示したとき、あるいはb型肝炎ウイルスの保菌者となった場合にどんな対応が必要なのかなどについて詳しく紹介しています。


ウイルスの有無を調べる

肝炎ウイルスに感染すると、そのウイルスが作り出す抗原といわれるたんぱく質とその抗原に対して体内の免疫機能が作り出す抗体、そしてウイルスの遺伝子などが血液中に増加します。

そのため、血液検査により、ウイルスの型や急性か慢性か、加えて保菌者であるかどうかなどがわかります。

b型肝炎ウイルスは、中心に遺伝子情報を保存するためのDNAを持っていて、その周囲をコアといわれる核とエンベロープといわれる外皮が覆う二重構造の形状です。そのエンベロープには、S蛋白、つまりHBs抗原があります。

b型肝炎ウイルスは、HBs抗原やHBe抗原というたんぱく質を血中に放出させます。そのため、まずは血中にb型肝炎ウイルスがつくりだすHBs抗原がいるか否かを調べるのが一般的です。そこで陽性反応がでれば、保菌者ということになり、さらに詳しい検査をすることになります。

主に調べるのは、HBs抗体、b型肝炎ウイルスの遺伝子であるHBV-DNA・ウイルス量です。加えて、家族歴を含む病歴や肝機能検査、超音波検査や腫瘍マーカーなどもおこないます。

HBe抗原も陽性のケース

検査の結果、HBe抗原陽性であれば、ウイルスが増殖し続けて、血液中に多量に存在している状態です。他者への感染力が非常に強い保菌者であることを示しています。多くは、HBV-DNA量が5以上です。肝機能検査の結果、ALTの値が31以上で、異常な状態であれば、1ヶ月から3ヶ月に1回定期検査を受け経過観察を続けます。

6ヶ月以上、異常な高値が続くようであれば、慢性肝炎となりb型肝炎ウイルス保菌者となります。一方で、肝機能検査でALTの値が異常値でなかった場合には、HBe抗原陽性の無症候性保菌者となり、この場合は、3ヶ月から6ヶ月に1度、定期検査を行い経過観察をおこなうことがほとんどです。

HBe抗原は陰性のケース

HBs抗原は陽性でも、HBe抗原は陰性というケースもあります。この場合、多くの人がHBV-DNA量は5以下です。それでも、肝機能の状態に異常があれば、再度HBV-DNA量の測定を行い、ほかの肝疾患との識別をおこないます。

一方、肝機能に異常がなければ、HBe抗原は陰性の無症候性保菌者ということになります。この場合は、6ヶ月から12ヶ月に1度の定期検査により経過観察をするのが一般的です。


完全排除はできない

HBs抗原が陽性でもHBs抗体が陽性というパターンもあります。これは、過去に感染して、現在はウイルス量が減少して肝炎が治まった状態であることを示しています。そのため、感染力の弱い保菌者ということになりますが、ウイルス量が多い人もいるので、HBV-DNA量の測定は必ずおこなうことが大切です。

b型肝炎はウイルスの量が非常に多く、c型肝炎ウイルスと比べてもおよそ1000倍です。

加えて、ウイルスが体内で生き延びようとする力が非常に強く、遺伝子変異をしながらすみつづけようとします。そのため、ウイルスを完全に排除するのは難しく、HBV-DNA量が陰性化しても、ごく微量ではありますが残っています。

HBe抗原あるいはHBe抗体が陽性で、肝機能に異常がなく、ウイルス量も基準値以下であれば無症候性保菌者となりますが、完全排除できていないため、日常生活に問題なくても油断はできないのです。自分では気づかないうちに進行していることがないように、経過観察は続けることが重要です。

そして、b型肝炎ウイルスは感染力も非常に強いため、保菌者である以上は他者に感染させない配慮は必要になります。家族や恋人などにワクチン接種を促すことも大事になります。

無治療でウイルス量が多いと肝硬変や肝がんに移行しやすい

b型肝炎ウイルスは慢性肝炎に移行すると、5つの時期を移行していきますが、無治療で自然経過した場合、HBV-DNA量が多ければ肝硬変へ進行するリスクが高いことが証明されています。肝硬変へ進行するリスクはHBV-DNA量が2.4未満の人と比べて、4から5の人では3.6倍、5から6の人では9.7倍、6以上では10.6倍と増えていきます。

これは、肝がんも同様です。無治療で自然経過した場合にHBV-DNA量が多いと発症リスクが高まり、HBV-DNA量が2.4未満の人と比べて、4から5では2.3倍、5から6では6.6倍、6以上では6.1倍と増えていきます。

そして、HBe抗原が陰性の非活動性の保菌者の人でも、同様にHBV-DNA量が多く、経過観察を怠ると肝硬変や肝がんへ進行するリスクは高いです。そのため、HBV-DNA量が多くなってきたら、非活動性の保菌者の人でも治療を検討する必要があります。

一方で、HBV-DNA量が少ない非活動性の保菌者の人でも、肝がんは発生します。その時の条件として、年齢が高いこと、ALTの値が40以上、そして、HBs抗原の量が多いときなどです。HBs抗原の量が1000以上になると、肝がん発症リスクは13倍にもなるので注意が必要です。

年齢別にみるb型肝炎の治療法

治療法は確立されている

肝硬変や肝がんへの進行リスクはあるとはいえ、保菌者だからといって、今は悲観したり、心配したりする必要はありません。検査をおこなってみて単純に無症候性保菌者ということであれば、治療は行わずに経過観察ですむこともあります。

一方で、治療が必要な場合でも、現在は、治療法が確立しているので安心です。b型肝炎ウイルスは、ウイルスをうつされた人の病状や保菌者が持っていたウイルスの状態など複雑な要素が絡み合って、発症したり、しなかったりが決まるものです。

このあたりのメカニズムがまだまだ解明されていないことも多いですが、感染後の対応についてはきちんと確立されているので、疑いがあれば早期受診が鉄則になります。また、自治体がおこなっているウイルス検査で陽性となった場合は、その後、診断を確定させるための検査や治療費などの助成が受けやすくなるので、一度受けて確認してみるのもひとつの方法です。

関連資料…アディーレ法律事務所