造血幹細胞移植はb型肝炎の発症リスクを高める?

白血病や免疫不全症など、血液に異常が生じた場合、造血幹細胞移植が治療に用いられることがあります。この治療法は原因を根本から解決することができますが、b型肝炎を発症するリスクもあります。なぜ発症するリスクが高まるのか、その理由は造血幹細胞移植を行う過程にあります。

b型肝炎の特徴も把握した上で、予防することが重要となります。


造血幹細胞移植とは

赤血球・白血球・血小板といった血球は、骨髄にある造血幹細胞で作られます。この造血幹細胞に何らかの異常が生じると、白血病や免疫不全症といった重い血液の病につながります。重い血液の病の場合、化学療法や免疫抑制療法だけでは治療が難しいことが多いです。

そこで治療法の一つとして用いられるのが、造血幹細胞移植です。この治療法は、健康な造血幹細胞を体内に入れ、骨髄の機能を回復させる方法になります。血球を作る部分を改善するため、原因を根本から改善することができます。

ただしこの方法は副作用も大きいため、取り入れる際は細心の注意を払わなければなりません。

造血幹細胞移植を受けるまで

造血幹細胞移植を実際に行う前に、まず実施されるのが移植前処置です。これは細胞の抑制を目的に行われます。例えば白血病など、がん細胞によって造血幹細胞の働きが低下している場合、移植前に少しでもがん細胞の量を減らす必要があります。

また、この移植前処置では、患者自身の免疫機能もできるだけ抑制するよう働きかけます。なぜなら、患者の免疫機能をできるだけ抑えないと、造血幹細胞移植を行った際に拒絶反応が起きる可能性があるからです。ドナーから造血幹細胞の提供を受ける同種造血幹細胞移植の場合、移植後に患者の免疫機能が移植した造血幹細胞を敵と判断、攻撃してしまうことがあります。

この拒絶反応が大きいと命にもかかわるため、少しでも拒絶反応が起こらないように、免疫機能を抑える必要があるのです。移植前処置では化学療法、放射線療法が行われますが、その威力は通常よりも強いです。そのため食欲不振・吐き気・嘔吐・脱毛・口内炎・血球減少といった症状が通常よりも強く出ます。

特に口内炎や喉の痛みが強いため、食事をなかなかとれない場合が少なくありません。

造血幹細胞移植を受けた後

移植前処置で細胞の働きをある程度抑えたら、静脈から健康な造血幹細胞を投与します。投与された造血幹細胞は血流に乗って骨盤まで行き、増殖し始めます。ある程度増殖すると、白血球をはじめとする血球を作り出すようになっていきます。

この時注意しなければならないのが、造血幹細胞移植を受けた後はしばらくの間、免疫力が極端に低下しているということです。

造血幹細胞移植を行う際、拒絶反応を避けるため事前に免疫機能の働きを抑制します。

さらに造血幹細胞移植を行った後、すぐに新しい白血球が作られるわけではありません。投与した造血幹細胞が定着し、ある程度増えてはじめて血球が作られていきます。造血幹細胞移植を行うと、一時的に白血球の量が極端に少なくなるのです。

白血球の量が少ないと、通常は感染しないような病を発症する恐れもあります。そこで移植後は白血球数がある程度増えるまでの間、「クリーンルーム」等の防護設備が整った部屋で過ごすことになります。

造血幹細胞移植によってb型肝炎になることがある

造血幹細胞移植を行うと、一時的に免疫機能が極端に低下、様々な病を発症するリスクが高まります。その病のひとつに、b型肝炎も含まれます。b型肝炎とは、b型肝炎ウイルスが繁殖することで起きる病。全身倦怠感・食欲不振・吐き気・黄疸といた症状が現れます。

このb型肝炎で特に気をつけなければならないのが、劇症肝炎です。劇症肝炎とは炎症の程度が強く、肝機能が急激に低下した状態を指します。

肝機能が低下することで意識消失等が起こり、生命機能の維持が困難になってしまうのです。造血幹細胞移植を行った後、b型肝炎ウイルスによる劇症肝炎で命を落としてしまう例も少なからずあります。そのため造血幹細胞移植を行った後、b型肝炎を発症させないように細心の注意を払わなければなりません。

b型肝炎は輸血で感染する?

肝炎ウイルスは種類によって感染経路が異なります。b型肝炎ウイルスは主に血液・体液を介して感染します。そのため輸血や性行為で感染する可能性が高い病気になります。造血幹細胞移植の対象者は、それまでに輸血を何度も受けている人が多いです。

またドナーがb型肝炎ウイルスを保有していた場合、健康な造血幹細胞と一緒にb型肝炎ウイルスも一緒に体内に入り込んでしまう恐れがあります。事実、造血幹細胞移植後にb型肝炎を発症した場合、まず検討するのはドナーがb型肝炎ウイルスを保有していたか、輸血に利用した血液にb型肝炎ウイルスが含まれているかどうかになります。

ただし現在の日本では、輸血によりb型肝炎ウイルスに感染する可能性は非常に低いです。

献血の際、事前にb型肝炎ウイルスをはじめ、血液感染する恐れのある病気を持っていないか事前に確認してから血液を採取します。これは輸血による血液感染を防ぐためです。ドナーから造血幹細胞の提供を受ける際も同様です。

事前に血液感染の恐れがある病を持っていないか確認してから、造血幹細胞を採取、移植に使用します。このように現在の日本では医療行為による血液感染を防ぐため、様々な処置を講じています。そのため輸血や移植により感染する可能性は非常に低いといえます。

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免疫機能の低下がb型肝炎を発症させる

造血幹細胞移植後、b型肝炎による劇症肝炎で命を落とす人は少なくありません。しかし現在の日本の医療では、輸血や移植によるb型肝炎ウイルスの感染は非常に少ないです。造血幹細胞移植後、b型肝炎を発症する原因として挙げられるのが、免疫機能の低下になります。

通常、b型肝炎ウイルスに感染しb型肝炎を発症した後、しばらくすると症状は落ち着き、炎症が起こることもなくなります。体内でb型肝炎ウイルスに対する抗体が作られ、ウイルスの働きが抑制されるからです。また人によってはb型肝炎ウイルスに感染したものの、症状が現れない人もいます。

しかし移植前処置による化学療法などにより、免疫機能が急激に低下すると、抗体の働きも弱まります。抗体の働きが弱まることでb型肝炎ウイルスが活発化し、症状が現れるようになるのです。造血幹細胞移植は治療の過程で特に免疫機能が低下しやすく、ウイルスを活発化させやすい状態にします。

そのため造血幹細胞移植を行う際は数値を確認し、早急に対応することが重要となります。